駐輪場は、決まったスペースにただ台数を収めるだけの単純なものではありません。設置環境(屋内、屋外、屋根の有無)利用者の動線、希望台数、収容される自転車など、様々な要素を考慮して駐輪場を設計する必要があります。この記事では、駐輪場設計のポイントをまとめています。
駐輪場の設置台数を検討するにあたり、まず最低台数を確認します。
区市町村毎に条例で附置義務が定められている場合が多く、施設の種類や規模によって台数が異なりますので必ず対象の区市町村へご確認下さい。
次に必要台数を確認します。
例えば新築マンションであれば施主毎に<戸数の○○○%>といった規定があることが多く、ここから算出したものが実際の必要台数です。
大規模修繕工事など既存建築物のリニューアル時は、現状の保有台数や使用状況を元に必要台数を決定します。
区市町村の条例によって駐輪場の設置条件が定められている場合があります。設計の前に各自治体に確認しましょう。
例:2段式サイクルラック設置不可、平置き区画の寸法、通路幅○○以上 など
施主がいる場合は、施主側の仕様書を確認します。仕様の内容は「上段は垂直2段式ラックのみ」「全体台数の○○%は3人乗り自転車対応」「通路幅○○以上」など多岐に渡ります。
同じ施主でも分譲と賃貸では仕様が異なる場合がありますのでご注意下さい。また、電動アシスト自転車や大型自転車の普及に伴い、仕様の変更が頻繁に行われるケースも増えていますので、案件毎に確認が必要です。ビシクレットでは仕様に応じた特注対応も行っておりますので、該当製品がご不明な場合はご相談下さい。
下記の通り、様々な条件がからむ場合があります。
・必要通路幅(避難経路につき2000必要など)
・子ども用、来客用、レンタサイクル用駐輪場などの有無
・屋外の場合、屋根の有無
・隣地境界線や避難階段などから駐輪場屋根までの距離
ビシクレットでは下記の通り分類しています。
垂直2段式ラック...上段ラックを垂直上下動して自転車を収容。下段にスライドラックを採用。
2段式下段スライドラック...上段に2段式ラック、下段にスライドラックを採用。
2段式ラック...上段を引出し、斜めに下ろして自転車を収容。上下2台で1セット。
スライドラック...ラックが左右に可動。自転車の出し入れを容易にします。
傾斜ラック...収容箇所が傾斜しているラック。
平置ラック...後輪が地面に付き、平置き状態に近いラック
デザインラック...整理整頓を目的としたラック。(収容効率を高める効果はありません)
平置駐輪場(白線)
設置条件で製品の仕様が定められている際はそれに従います。
条件が無い場合、必要台数の他、駐輪場の広さ・形状・想定される利用者などを元に検討します。また、サイクルラックの製品毎に定められた必要幅や奥行き、必要通路幅なども含めて複合的に判断し選定します。
一般的に収容効率が高い製品は、2段式ラックでは「クランクSG」、平面式ではスライドラック「BC-OSF」「AR-SF」などが該当します。
ところが敷地形状によっては推奨通路幅を確保できないなどの理由から、他の製品の方が収容効率が高まる場合もあり物件の特徴に合わせた製品選定が必要です。
近年、3輪自転車やタイヤが極端に太いファットバイク、特殊形状のチャイルドシートなど、どのラックにも収容することが困難な自転車が増えています。駐輪場の一部に平置区画を設定しておくと安心です。
盗難対策を行う場合、前輪側にH300程度の盗難防止バーを設置します。特に駐輪場がセキュリティー外にある場合は設置することを推奨します。
端部区画が通路や道路境界線に面する場合や、強風が予想される箇所では転倒防止バーを設置します。
・製品毎に収容できる自転車の重さやインチ数が異なります。
・電動アシスト自転車を収容できない製品もあります。
・3人乗り電動アシスト自転車に対応した製品であっても、連続収容が想定される場合は、標準品よりピッチを広げる必要があります。
・2段式ラックを屋内に設置する場合、天井高や梁の確認が必要です。製品によってCH2500以上またはCH2600以上を推奨しています。上段を引き出すタイプの2段式ラックを配置する場合、通路部分の梁や下がり天井に自転車が干渉しないよう注意が必要です。
・設置場所はフラットな土間コンクリートとして下さい。
製品毎に台数計算式を設定しており、この式に当てはめることで収容台数の算出を行います。
計算式はカタログや製品図面内に記載しています。
小数点以下は切り捨てて下さい。
全ての計算式は普通自転車を想定しています。大型自転車が入る場合、別途計算が必要です。2段式ラック(参考:BC-W-1G/BC-W-1GH)はセット数が算出されます。セット数x2が台数です。
駐輪場屋根と自転車ラックを組み合わせる場合、奥行き寸法が変更となるため注意が必要です。
例えばスライドラックは可動時に柱と干渉しないよう、柱より通路側へ設置する必要があります。
この記事の監修
株式会社ビシクレット
駐輪場ひとすじ26年、 納品実績18,000件以上の駐輪場専門の会社。
マンション、自治体、商業施設、民間の駐輪場を中心に、設計から販売、設置、運営管理までワンストップで対応。平成29年度駅前放置自転車対策事業に関し東京都より感謝状を受贈。
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